これまで、福岡は地震に無縁というイメージがあったので、マンションディベロッパーも購入者も地震対策への関心は高くなかった。実際、福岡で建設されたマンションの多くは、建築基準法で定める耐震力は備えていても、建物の揺れによる被害を軽減する対策(制震or免震)は施されていない。しかし、 福岡県西方沖地震以降、地震が身近な災害として認識されるようになり、地震対策への関心が高まっている。
「耐震構造」と呼ばれる新耐震設計法(建築基準法 1981 年改正)による建物は、震度5強程度の地震では大した損傷を受けず、震度6強の地震であっても倒壊しないように作られている。「耐震構造」では、地震に耐えるよう構造部を強靭・堅固に作って建物全体で地震を受け止める。しかし、建物全体で地震エネルギーを受けるので、揺れによる室内設備や家具の転倒、間仕切壁の破損などの生活機能を失うダメージを受けることがある。この揺れによる生活機能被害を抑えようと開発されたのが、「制震構造」と「免震構造」と呼ばれる建築工法 だ。
建築基準法では、地震などの場合でも、建物の倒壊で人命が脅かされたりすることがないよう、構造基準が定められている。これを「耐震構造」と呼ぶ。柱や梁を太く、壁を厚くすることで地震の力に対抗する。しかし、建物を支えることに関係のないドア周りの壁や間仕切り壁などは、地震への特別な対応力を持たせていないので、壁面がひび割れたり、壁の損傷でドアが開かなくなることがある。また、揺れによる家具の倒壊や移動なども抑止できない。
建物の倒壊を防ぐとともに建物の揺れを軽減する対策が施された建築工法だ。建物の各階にねばりのある鋼材(制震ダンパー)を設置し、階ごとに地震エネルギーを吸収して揺れを軽減する。建物の揺れの程度は「耐震構造」の 70 ~ 80 %といわれている。「横揺れ」ばかりでなく「縦揺れ」にも効果があり、柱や梁の損傷を軽減する効果も高いため、タワーマンションでは主にこの制震構造が採用されている。
制震構造同様、建物の倒壊を防ぐとともに建物の揺れを軽減する対策が施された建築工法だ。この工法では、建物の基礎の部分に積層ゴムなどを用いた特別な装置(免震層)を設置する。この免震層に地震の揺れをに吸収させることで、建物の揺れを軽減する仕組みになっている。建物の揺れの程度は「耐震構造」の 30 ~ 50 %といわれている。この免震構造は、「横ゆれ」には大きな威力を発揮するが「縦ゆれ」には対応できない。
マンションの地震対策は、建物の建築工法以外に、エレベーターやガス機器などの付帯設備にも配慮が必要だ。以下は対策の例である。
災害時にエレベーターを利用することは危険なので避けなければいけないが、乗っている最中に地震が発生することは考えられる。地震管制装置つきエレベーターには、地震を感知すると最寄階へ自動的に停止しする機能がついている。
ガスメーターにマイコンを取り付けることで、センサーが大きな揺れを感知するとガス供給を自動的にストップする。
地震の揺れで戸棚の扉が開き収納物が落下してケガをすることがある。耐震ラッチには、揺れを感じると扉をロックさせる機能が組み込まれている。また、地震によって玄関ドア部分が変形しても扉が開くように工夫されたのが耐震ドア枠や耐震丁番だ。